素材と料理の差でしょうか・・・腕のいい料理人になりたいものです
幻冬舎
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著者(話者)の一人である佐藤優氏は、あの鈴木宗男氏(鈴木ムネオ氏と書いた方がピンとくるかな)と共に、一度は社会から葬られた方で、実際に約1年半も拘置所独房に閉じ込められていた。
この人の凄い所は、そこで世を儚んで隠居などせず、ペンを持って世に打って出たところでしょうか。
まあ、外務省時代にクレムリンに入り込み、エリツィン大統領の隣の部屋で座っていたような人ですから、並みの根性ではないことは想像できます。
本人曰く、”私は権力の中枢に近づいて真実を知ることが面白かったんです。”
手嶋龍一氏の方は勉強不足でピンと来ないままでした。
まずは、著書の『ウルトラ・ダラー』を読まないと始まらないでしょう。話題になっていたことしか知らない・・・
本書で一番ワクワクしながら読んだのは、序章でこの『ウルトラ・ダラー』について二人で掛け合っているとこです。 これだけでこの本読みた~い、って気になります。
何か知的な刺激が欲しい時にはいい読み物です。
外交と情報(インテリジェンス)の匂いを嗅がせてくれます。
■PickUpPoint
◆秘密情報の九八%は公開情報を再整理することによって得られるという。
(スパイではありませんが、ビジネスで知りたい情報が公開情報を基に得られる可能性を示唆していると取ると、心強いといえば言えます。 「”再整理”ができたら」ですからね。 この公開情報の再整理のノウハウを知りたいな。 彼らのメシのタネですから無理でしょうが・・・)
◆さらにいえばそんな後講釈は、自分自身のビジネスにさえ役立たない。 インテリジェンスを本当にビジネスに生かしている人間は、「こうなることはだいたい読めていた」なんて絶対に言いません。 「知っていた」ではなく、必ず「教えてください」と言うんです。
(商社とのからみでの一節。 日商岩井と三井物産を褒めておられました。 ”他の商社の連中は、みんな「実は知っていました」です。”と。 そういえば、この前の行動経済学でも「後知恵バイアス」がありましたね。 バイアスを上手くコントロールできるとビジネスでも優位に立てるというこでしょう)
◆これをハイデガーは「用材性」と名づけたわけですが、人間は自分の手段や目的に合わせて物事を把握しようとするんです。
(イラク侵攻の大義名分の一つである「大量破壊兵器」にからむ一節で、アメリカがガセネタに振り回された事への指摘。 結局、現時点でもイラクから大量破壊兵器は見つかってませんね。 他の要因もあるのでしょうが、アメリカでさえ陥るのですから、かなり強力な呪縛なのでしょう。
時々、自分でも立てた仮説の立証ネタだけを探したりしています。 今のところ思いつくのは、信頼が置けて、利害関係の無い方による第三者チェックでしょうか? 会社で体制整えようとすると、お金かかるな~)
◆「勝った者は決して白い歯を見せてはいけない。 なぜならば、相手側が譲りすぎたことに気づき、交渉に禍根を残すからだ」。 これは欧州に伝わる格言です。
(Win-Winとはいえ、相対値までイコールではないでしょう。 人間が相対で認識してしまう以上、自分より相手が「より」得したと思われたらいけないとの戒めかと)
◆戦後の日本外交を良くも悪しくも支配してきたのは条約局です。 条約官僚は、国際条約など国際的な約束の解釈や運用については絶大な権限を持ってきました。
(”外務省条約局”自体の存在を知りませんでした。 これが恥ずかしい事なのか、知ってる方が凄いことなのかは、ちょっと判りませんが・・・ 憶えるために書きました。 今はこんだけ)
◆たとえこちら側はそんな意図を持っていなかったとしても、その行動を国際社会がどう評価するかは、まったく別の問題ですからね。 したがって、事は同盟の根幹にかかわるというのが、私の認識でした。
(〇三年の日本による情報収集衛星打ち上げに関する一節。 自分の言動が相手にどう受け止められるかをどこまで想像できるかということか。 それって相手の思考と感情の動きをどこまで読めるかってことで、大は国家間、小は家族にまで言えることですね。 原理は同じでしょうが、「読む」のが個人か組織かで随分複雑度が変わります)